行政学は、近代国家から現代国家への過渡期に際し、現代国家に必要不可欠の行政体制を整えるという制度改革の課題に応えて誕生した学問である。西尾勝の言を借りれば、制度学・管理学・政策学、という3つの側面を持つ。
行政学が扱う「行政」の定義は曖昧かつ複雑である。西尾によれば、関係概念としての「行政」の定義の試みは、主に3つに分類される。1つ目は、主に公法学で議論されてきた、立法権・司法権・行政権という3権の一つ、という関係設定の方法であり、これをめぐって消極説・積極説の対立がみられた。2つ目は、政策過程における執政・行政・執行、という観念的な3形態の中での1つという定義であり、ここでの行政の役割は、執政(内閣・大統領府)における政治決定をサポートし、そこできめられた決定を実施する為に執行部門を監督する、という管理職的ものとしてとらえられる。
3つ目は、政治・行政2元論の枠組みの中での行政定義であり、ここでは人的構成の差異、つまり政治を構成するのが選挙で選出された政治家(並びに彼らによって政治的任用をされた人間)であるのに対し、行政を構成するのが専門試験で匿名的に選出された人間である、という点に着目する。つまり、ここでいう政治の場とは、省庁等の頂点(大臣とその周辺)・内閣・大統領府及び議会であり、行政とは、省庁の事務次官以下、並びに自治体の局長・部長以下の部分である。この人的構成の差異をもとに、例えばロバート・パットナムなどは、経験的なイメージとして、「決定―実施」「価値―事実」「エネルギー―均衡」といった役割上の対比が見られる、とする。
日本の行政学においては、後述するように、戦前官僚制を如何に政治的に統制し、民主的公務員制に変えていくのか、という規範的要請が強く表れていた以上、この3つ目の概念設定(に近いもの)を暗黙の前提とした研究業績が目立つ。
尚、狭義の行政学とは、諸々の政策領域における行政(経済産業行政・防衛行政・厚生労働行政・警察行政・教育行政など)の土台になる部分に焦点をあてる学問であり、その意味では官僚制(または公務員制)そのものの作動原理を解明することにその本質的意義がある。行政学者の研究業績が、専ら官僚の政治的行動(政官関係)、公務員人事、財政調整、法務、といった行政活動の根幹になる人・金・制度の部分に特化していることも、ここに原因がある。行政の土台ではなく、政策領域における行政活動に特化した研究分野は、例えば教育行政学(於;教育学部)、防衛行政論(於;防衛大学校)、経済産業行政(≒公共経済学)、財務行政(≒財政学)、等、別系統の学問領域として存在するケースが多い。また、行政学そのものにおいても、政治過程における行政官僚制の役割を論じる政治学的アプローチと、行政機関内部での組織管理という点に着目した経営学的アプローチが併存している。その意味で、行政学とは、方法論・他分野との境界が曖昧といった「弊害」を持つ一方、学際的に発展していく余地を広く内在する学問でもある。
参照元:Wikipedia「行政学」
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参照元:Wikipedia「行政学」
参照元:Wikipedia「行政学」